Voller Brothers
UK / London

「ヴォ―ラー・ブラザーズ」はイギリスのみならず、世界的に有名な“コピーイスト”三兄弟を総称した呼び方です。

それぞれが有能な演奏家としても活躍しており、ウィリアム(William Voller 1854-1933)はヴィオリスト、アルフレッド(Alfred Voller 1856 -1918)はチェリスト、チャールズ(Charles Voller 1865-1949)はヴァイオリニストでした。

楽器製作の中心的な役割を果たしたのは年長者のウィリアムで、シャノ―(Frederick William Chanot 1857-1911)の下でヴァイオリン製作を学んだと考えられます。

1892年頃にイギリスの著名なディーラー、ジョージ・ハート(George II Hart 1860-1939)と知り合い、ハートの店に出入りする一級のオールドイタリアンをコピーする依頼を受けます。

詳細は不明ですが兄弟は分担して作業をこなし、ひとつの楽器を製作していました。

そのコピー精度と外観は驚異的で、ニスの古色のみならず、板に割れやヒビを入れたり、わざと虫食いの材料を使用するなど、通常では考えられない手法で本物と見紛うヴァイオリンを製作していました。

そのため当時、彼らの製作した楽器が「本物のストラディバリ」としてオークションに出品されてしまい、著名な製作者による鑑定書が付いてしまう(※後に真実が明るみになり)事件まで起きています。

兄弟はシュツットガルトのハンマ(Hamma)やニューヨークのウィーリッツァー(Wurlitzer)などにも楽器を提供していました。

兄弟はアマティやストラディバリ、ガルネリ・デルジェスのみならず、ルジェリ(Rugeri)、トノーニ(Tononi)、グランチーノ(Grancino)、テストーレ(Testore)、グラニャーニ(Antonio Gragnani w.1765-1794)、モリ・コスタ(Felix Mori Costa)など当時はあまり知られていないイタリアンのコピーも製作しており、その中でもガリアーノ・ファミリー(Gagliano Family)のコピーは特に秀逸な出来でした。

出来過ぎたコピーによって“人を欺いた”イメージが先行してしまいますが、一つ一つの楽器は高い完成度と魅力を備えており、今後ますます評価の高まる製作者となっていくでしょう。

引用《 The Brompton’s Book of Violin and Bow Makers 》《 The British Violin 》

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